インターネット法律研究部

本日のインターネット法律研究部定例会は、著作権関係の話をS先生がご発表。ハイブリッド開催で「私も508号室にいます」「私も508号室にいます」というパラレルワールド的なことがwwそれはそうと著作権法114条の損害額(逸失利益)の推定規定が来年1月1日施行の改正。1項と3項の逆転現象の解消。ここは実務的に影響が大きいな。ビットトレントの発信者情報開示請求の話PtPの断片的データの送受信でも著作権侵害として発信者情報開示請求が認められるのが判例の大勢。その他インラインリンクを巡る話など盛り沢山。


ELN

本日のELNは「生成AIに関する著作権法上の諸問題」と題して、なんとシンポジウムのような二部構成の豪華版。第一部は三輪先生のご講演。AIの開発・学習段階と生成・利用段階は適用条文が違う(前者30条の4)。文化庁は今年6月に一般向けにセミナーを開いた。講師の先生からも詳しい解説。重要な論点ばかりで要約不可能。非享受目的とは云々とか。生成AIが既存の著作物に類似したものを作成したが利用者は既存の著作物を知らなかった場合とか。第二部は加えて塩月先生と呉竹先生に柴野先生が司会でパネルディスカッション。依拠性についてこれまでの裁判ではあまり争点にならなかったが、今後は増えるのではないか。AI生成物の著作物性は。写真の著作物性でスメルゲット事件とか。YOL事件にも言及された。管理人も思ったそれ。前提として、本来は立法で解決する問題であること、創作的寄与を生成前後で分けるべきこと。前者は今の著作権法で皆が納得する結論は無理、後者は意図しない表現が生成されたらどうなのか。映画監督が詳細な指示で創作的寄与が云々。その他非常に多くの諸々。


ガイドライン

去る10月24日に任天堂が「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公表した。これに文句を言う向きもあるようだが、とんでもないことである。このガイドラインは「主催者が個人で、営利を目的とせず、小規模である」場合はゲームを使って大会を開催しても著作権侵害とは言わない(個別の許諾手続は不要だ)よ、ということなのである。有難い恩恵なのである。なんと「出場者がオンラインで300人以下、オフラインで200人以下」なら小規模なのである。管理人は一桁少ない規模感だった。こんな大勢でも小規模とは、太っ腹なのである。しかも、オフラインの大会では一人につき税込2,000円以下の出場料や1,500円以下の観戦料を取っていいというのである。至れり尽くせりなのである。これに文句を言う向きは「任天堂のゲームで俺に金儲けをさせろやゴルァ!著作権?なにそれおいしいの?」という輩なのである。そんな輩の言うことなど正当性は全く無いのである。そんなにeスポーツwをやりたいなら、eスポーツwに積極的wな会社のコンテンツを使えばいい。さぞかしタダで使わせてくれるんだろうねえww


今日の一行雑感

著作権侵害は、親告罪。これを理解していれば、著作権者以外の者から「著作権侵害だ!」と言われても「お前に言われる筋合いはない」と突っぱねることができるでしょう。


ELN

本日のELN月例研究会は「智恵子抄事件、著作権判例百選事件において現れた法理の対峙を検討して、編集著作物の成立(誰が編集著作者になるのか)を考察する」と題して、M先生のご発表。平成5年3月30日最高裁判例。これは光太郎側が勝ったもの。判例評釈でも疑問のある判例と言われてきた。他者Aも編集に関与したのに権利なし。特別な事情があったのか。出版の最終決定権者(本件では光太郎)が決定したら編集著作権はそこで生じるという理屈。決定行為に創作性はあるのか。この理論から、著作権判例百選の第4版から第5版になった時に第4版にいたX氏が第5版では抜けた、第5版は第4版の翻案だから編集著作権(共有だが)の侵害という主張。110判例まではX氏は関与せず、最後の編集会議で113判例になって最終確定した時にX氏が関与した。第5版は短期に終わって第6版になり、この判例の評釈が載っている。著作権は(創作性がある)事実行為により生じるはず?…編集事実行為説と権限・確定行為説の対立である。その他諸々。


ELN

本日はELNシンポジウム「AIによる表現物の生成を巡る諸問題」である。松原仁(東京大学情報理工学系研究科次世代知能科学研究センター教授)、奥邨弘司(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)、柿沼太一(弁護士法人STORIA弁護士)、という充実の講師陣。前半はこの3名がそれぞれ20分程度の講義。後半はこの3名にELN理事弁護士を加えた5名でのディスカッション。チャットGPTの技術がもう時代遅れになるかもしれないという衝撃の指摘。技術の進歩の速度は極めて速い。AIは絵をそのまま覚えているのではなくパラメータで覚えている。著作権侵害かどうかは、AIと操作者の2段階で考えるという指摘。(なお、著作権者の界隈では、画像系だけ突出してチャットGPTに批判的であるという枠外余談)。著作権侵害かどうかを判断するにはかなり緻密で詳細な要件。ただ、チャットGPTは処理自体は英語でやっているので日本人が日本語で使うと、まず英語に翻訳され、英語で処理され、それをまた日本語に翻訳している。元データが英語系なので英語圏の思想が反映させる。日本製のAIが必要だというもっともな指摘。学習対象から外せというオプトアウトを認めさせつつ公平なAIという矛盾。朝日新聞記事は学習したが産経新聞記事は学習していないAIと、朝日新聞記事は学習していないが産経新聞記事は学習したAIでは、出てくるものが全く異なるだろうという鋭い指摘(学習を拒否するのは拒否者にとってマイナスの結果をもたらすのではないか)。その他諸々。


ELN

本日のELN月例研究会は「コロナ禍でのオペラ上映—驚きの手法と限界への挑戦」と題して、弁護士かつオペラ指揮者かつ歌劇団主宰の山島先生のご講演。コロナ第6波の中で2022年1月に新国立劇場で開催。当初は2020年7月を予定していたが中止していた。わずか1年前だが今と状況は大きく違った。チケット85%売り切った。中劇場は奥行30mもある。当初の中止は2020年4月7日の公共施設の閉鎖が決定打。稽古ができないから。合唱活動が危ない状況。新国立劇場での上演ガイドラインの厳しさ。発生時は前後2m以上で左右1.2m以上。向かい合う場合は4m以上。歌い手からオーケストラピットまで4m以上。苦肉の秘策:ワイド・オープン・オテロ。第1幕抜粋等を動画で流したが、管理人には通常のオテロとの違いはわからない。なぜなら通常のオテロを知らないから。ただ、特にスカスカとは感じなかった。30mは音は0.1秒遅れる。歌手は難しい。音響も難しい。劇場使用期間中に250名の1人でも陽性者が出たら公演中止。この極めて厳しい条件のもとでオペラを成立させたのは偉業である。でも赤字。チケット100%でも赤字という…。公演をやれば助成金が出るが、やらなければ出ない。危険は大きい。思うに、それでも挑戦するのは素晴らしい志である。世の中、金銭的に損なことをやるのは全て志である。


ELN

本日はELN月例研究会。「音楽教室最高裁判決について」と題して、上野達弘先生のご講演。例の、カラオケ法理をめぐる令和4年10月24日の最高裁判決である。上野先生は、カラオケ法理について長年研究してきた方。カラオケ法理は、それが昭和63年最高裁、クラブキャッツアイ事件判決で確立されてから学んだ者にとっては「そういうものか」と所与のものとして受け取りがち。手足でなくても管理性と利益性で云々。カラオケに限らずどんどん広い範囲で使われてしまったのがカラオケ法理。当時は特殊な法状況。昭和9年のプラーゲ旋風による窮余の…。2000年1月1日施行まで30年近く存続した附則があった期間中のもの。当時のカラオケは歌詞なし。歌詞に及ぼすにはカラオケ法理が必要だった。その後、ロクラク事件高裁判決でもカラオケ法理は使われた。そのような流れを経て今回の事件に。


ELN

本日のELN月例会は「マンガ海賊版サイト対策の現在とこれから」と題して、平井弁護士と丸田弁護士のご講演。両先生は理系から弁護士になった弁理士登録もしている方。マンガ海賊版へのアクセスはコロナの巣籠もり時期に急増。かつての漫画村の3倍まで。対策により最上位サイトの閉鎖で減りはしたが、まだ漫画村の1.5倍くらい。ダウンロード型はサイバーロッカーの有料サービスで高速DL可で稼ぐ。ストリーミング型は卑猥な広告で稼ぐ。DLや解凍がなくスマホで簡単に読める。対策は様々あるが困難性あり。両先生が、様々な対策と共に現在の到達点を詳細に説明。CDNはContentDeliveryNetworkのこと。キャッシュヒット率99%とか。他に検索事業者への働きかけ。こちらにも問題はあるが…とにかく網羅的で有意義な講義である。


ELN

本日のELN定例研究会は「NFTを利用したビジネスと法的問題」と題して、スタートバーン株式会社のO氏と、N弁護士が講師。最近NFTは流行っているとはいえまだ黎明期。今年突然何十倍の市場規模に。特に8月から。プレイヤーの参入が多いが、投機的なものではない。半永久的に遺り続けるあなただけのもの、である。版画に近い。暗号資産と同様にブロックチェーン技術を使う。ブロックチェーンで使われている電子証票がトークンで、NFTとFTがある。NFTは中央管理者がおらず、誰も信頼しなくてよい世界である。デジタル作品を所有する体験、NFTルールを設定し自動執行が可能に(流通ごとに最初の人に支払いが発生するとか)、サービスを跨いだやりとり。二次流通は一次流通の数倍の価格になる。成功の秘訣は、ストーリー、ユーティリティ、コミュニティ。現状の課題はサービス横断流通の困難性。著作権問題。秘密鍵を自分で管理とか、暗号通貨の取扱いとか。イーサリアム上で販売した場合、一つの販売で平均家庭電気消費量の2年分、異常な量であり環境負荷が大きい。法的問題については、物体ではないので所有権ではない。NFTの取引においては当事者がどういう合意をしたかによるため、著作権の譲渡ではないのが通常だろう。著作権法上の展示権か。公衆送信権は。利害調整のための権利処理としてプラットフォーム関与型と非関与型が考えられる。その他諸々。


ELN

昨夜のELN月例研究会は「放送局のネット配信事業と専業プレイヤーの動向と展望」と題し、青山学院大学総合文化政策学部教授の内山先生が講師。今回から管理人がZoomウェビナーのホストをやりましたが、最初はなかなか慣れないものです。それでもやればわかるということがあります。講義の内容は大変興味深い。米国以外で映画産業でハリウッドが過半でないのは日本くらい。自国映画が過半でないというのは異常なことのはずなのに、大戦間でヨーロッパにハリウッド映画が大量に持ち込まれたと。映画の力は凄い。あれでみんな米国的価値観を植え付けられるのです。だから中共は恐ろしいし、物事の真実がわかった上で実行力があるのです。何事も「国産」が一定以上のシェアを持っていないと、外国に支配されるということなのです。エンタメ産業で働く人の処遇改善とか、最初の一歩は単純労働者を外国から入れないことですが、次の一歩は「ちゃんと契約書を交わしましょう」…ではないんですよ。法律実務家以外はみんなそう言いますが(法律実務家でも大手渉外事務所のような資本家付弁護士は言いますが)、末端の「労働者」がいちいち契約書なんか交わさないし交わせない。無理矢理交わさせても、逆に「労働者」に不利な内容の書式が出回るだけ。ではどうするか。それは消費者契約法のように、一般法理として、「資本家」と「労働者」の契約関係は契約書にとらわれず裁判所が公平に評価し認定するという法律を作ればよいのです。


ELN

本日のELN月例会は「ゲーム音楽の活用と法的問題」と題して、バンナムのO氏とS氏をお招きし、O先生が司会でY先生がサブという布陣。ここでゲーム音楽とは時宜に適っている。Zoomウェビナーで行われるのは、この種の会合では本当に便利である。ゲーム効果音も著作権的な観点から譜面として書き起こしてあった。ただ、当初はぴったり譜面に当てはまらないようなものだった。ゲーム内から飛び出した音楽利用が増えている。著作権収入と原盤権収入。Jasrac等に登録していない。ゲーム実況は「やられたい放題にやられてしまっている」とのこと。Y先生から音楽の盗作の裁判例の解説。ワンレイニーナイトイントーキョー事件、偶然の暗合では足りず依拠性が必要。記念樹事件、地裁は棄却したが高裁は綿密に数字も使って計量して同一性を肯定。しまじろうのわお!事件、メロディは違ってもテンポが同じなら…?O先生による米国の裁判例では、日本では類似性なしとなりそうなものでも認めたものあり。その他諸々(任天堂がマリオのコインゲット音の商標登録を断念したとか)。


ELNシンポジウム

本日はELNシンポジウム「ライブエンタテインメントとDX対応」と題して、山下貴司(自民党クールジャパン戦略推進特別委員会、事務局長、元法務大臣)、高木美香(経産省コンテンツ産業課課長)、三好佐智子(演劇プロデューサー、文化庁EPAD事業事務局マネジャー)、中崎尚(弁護士)、福井健策(弁護士)、という豪華登壇者でZoomウェビナーにより開催。参加者も非常に多い。ライブイベントは売上高がここ20年右肩上がりだったのがコロナ禍で80%減と断崖絶壁、壊滅的状況。チケット代金は公演中止で主催者に帰責事由が無くても払戻しが原則。不可抗力でも。経費はどうか。スタッフへの支払いとかも主催者側に帰責事由が無ければ支払義務は消滅となりそうだが部分的に履行していたりして経費は発生する。イベント中止保険は感染症拡大は免責が大半でほぼ機能せず。政府は損失補償は否定(財務省の意向か)。J-LODlive等の大規模補助金が生命線。配信には権利処理が必要。EPAD事業。舞台は実演にこそ価値という考えの人が多かったが…多くの舞台演劇がアーカイブ化。3分動画を見られる。その他UGCとか諸々。投げ銭と資金決済法の壁。ほんと、高額のスパチャはわからん。タニマチというのは日本独特の感覚なのだろうか…。なお規約で不可抗力で公演中止の場合にチケット代を返金しないと定めるのは、管理人としては世間に受け入れられにくいと思うし、前売券が売れにくくなるという指摘はもっともだろう。日本の著作権法の著作者人格権はベルヌ条約よりかなり強い。名誉声望を害するどころではなく意に反するものは全て。その他諸々。


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