判例地方自治

本日の判例地方自治研究会は管理人も発表です。「チェック・オフ中止に関する不当労働行為救済命令取消請求事件(泉佐野市・大阪府、大阪地判H28.5.18)」です。争点はいくつかあるも、中心争点は、財政健全化を理由とするチェック・オフ(使用者が給与支給の際、労働者の賃金から組合費を控除し、労働組合に一括して渡すこと。賃金の全額払いの原則の例外として、労働基準法24条1項但書の労使協定に基づくもの。労働組合が個別に徴収する手間が省ける一方、使用者には特に利益は無いので、労働組合のための行為である)の有償化が支配介入(労働組合法7条3号本文前段)か、ということ。本件は労働組合を敵視する(?)市長が労働組合の弱体化を意図して行なったものであり支配介入と認定されました。管理人が面白いと思うのは、支配介入の成立には、労働組合の弱体化を図ろうとする意図(不当労働行為意思)が必要と解されるところ。主観的な要件ですか…まあ、客観的事実の積み重ねで立証されるとはいえ。本件自体は、明らかに支配介入の意思でやっているので結論は是でしょうが、そもそも長年無償で便宜供与される、それが当然というのはどうなのよ、という根本的疑問があります。これを廃止するのは、合理的理由と誠実な交渉が必要とのことですが、そもそも存在することに合理的理由があるのか…長年存在すること自体が合理的理由を根拠づける、まあ現実社会はそんなものですが。 -----

改正行政不服審査法

本日の自治体等法務研究部は、宇賀克也・東京大学大学院法学政治学研究科教授を講師とし「改正行政不服審査法について」と題して丁寧な講義。行政不服審査法は52年振りの抜本的大改正。目的からして「簡易迅速な手続による」から「簡易迅速かつ公正な手続の下で」と変更されます。不服申立ての種類の一元化(異議申立てと審査請求を、審査請求に)、不作為についての不服申立ての性格の変化(迅速な処分を促す手段を、争訟の一回的解決の手段に)。後者は、これまでは処分をしろと求めたら否定的処分をされたというヤブヘビに対応するもの。その他、審査請求をすべき行政庁の変更、みなし上級行政庁、再調査の請求、再審査請求、審理員、標準審理期間、審査請求期間、審査請求書の記載事項、誤った教示をした場合の救済、執行停止、弁明書、口頭意見陳述、審理員意見書、行政不服審査会等への諮問、等々の極めて詳細かつ具体的な内容でした。

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昨日の雑感

昨日の判例地方自治研究会は、子ども手当支給認定留保損害賠償請求控訴事件(長野県白馬村、東京高判H26.10.22)を小池先生、違法公金支出返還請求住民訴訟事件(神奈川県、横浜地判H26.4.23)を管理人の発表でした。前者は、要するに「子ども手当は子供の養育費という趣旨だから、現実に子供を養育している親に速やかに支給するしかない」ということ。後者は弁護士報酬が県の内規より少し(?)高いからといって文句を言うな…ではなく、住民訴訟の前提には住民監査請求が必要だが、対象行為から1年以内という原則の例外としては「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件各委任契約(対象行為)の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内」に監査請求がなされなければならず、これは単純に1年間の起算日を遅らせるという処理ではなく、この相当な期間はかなり短い(2〜3ヶ月?)ことに注意が必要ということ。まあ、内規(270万円余)より少し高い報酬(357万円?)に文句を言うくらいなら、同時期に行われた、内規よりはるかに高い報酬(1億2000万円とか3億円超?とか)に文句を言えよ、という話(違)。

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判例地方自治

昨日の判例地方自治研究会は、差押解除懈怠国家賠償請求事件(静岡地浜松支判H26.9.8)と入札参加資格制限違法国家賠償請求事件(水戸地判H26.7.10)でした。前者は不動産の任売と競売の狭間で後順位で差し押さえた浜松市が差押解除を渋ったために競売になって安くなったよ、という事案。前提として、国税徴収法上、無益差押は禁止され差押解除義務があります。ちなみに任売予定額は570万円で競落価格は305万円。ただし任売の場合は工事負担が生じていたこと等から100万円の限度で損害が認められました。弁護士費用は10万円…訴訟で認められるのはこんなものなのです。後者は露骨に地元外業者を一般競争入札から排除しようとした件で、市長の意図は要するに選挙対策であろうと。この訴訟では負けて「ごめんなさい」することになったが、それでも「頼もしい市長」として効果はあったであろう。これが民主主義の実態です。

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昨日の雑感

昨日の自治体等法務研究部判例地方自治研究会は、固定資産税価格決定処分取消請求事件(北海道七飯町・函館地判H26.7.24)を澤村先生、口蹄疫損失補填請求事件(宮崎地判H26.4.23)を鎌田先生のご発表。前者は建物の固定資産税台帳登録価格が適正な時価を上回る違法なものとする内容。そもそも建物の課税面積合計が登記床面積より大幅に広いぞ、という主張です。しかし結果は請求棄却。課税面積と登記簿面積の差は、少なからず共有部分床面積の持分割合の加算の有無によって生じたと考えるのが相当、という理由です。その他にも色々な争点がありましたが、退けられています。実務において登録価格は、純理論的には全て不動産鑑定士に鑑定してもらうことになるが、勿論そういうわけにはいかず、ある程度大雑把に、基準点数を決めて評価方法と計算式に当てはめて算出する、その具体的計算は業者に依頼するという。行政は計算結果を確認はするが、全てをするとは思えません。どうしても実態と乖離する不動産は出てきます。ただし、不満ならとにかく審査申出をして…という手続を代行する非弁業者は消費者被害を生じさせていると言えます。インターネット時代になって、弁護士にしかできない法的紛争の代理を、なんやかやと屁理屈を捏ねて(「代行」に過ぎない云々)大っぴらにやっている例が多いですからねえ… -----

損害…?

一昨日の自治体等法務研究部定例会での判例地方自治研究会報告における、住基ネット不接続に係る損害賠償請求住民訴訟事件(東京地判H26.5.16)は、なかなか興味深いものでした。住基ネット反対派の国立市A市長がH14.12.26に住基ネットの接続を切断したが、その後H19.5に当選したB市長もH23.4まで不接続を継続したというもの。住基ネット接続は法的義務であるからABの共同不法行為が成立するが、国立市が被った損害額は「国立市が住基ネットに再接続することにより生じた費用は、住基ネットサポート委託料、再接続、システム等設定作業委託料等の合計1,814万円であるが、他方、国立市は、本件切断等がなければ支出されていたであろう住基ネット用機器賃借料、保守委託料等合計2,090万円の支出を免れているため、上記共同不法行為による損害はなかった」ので請求棄却という…つまり法的には制裁(責任追及)しようがない、ということですかな。

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今日の雑感

本日の判例地方自治研究会は、名古屋高判H26.5.22岐阜県各務原市の事件と、東京地判H26.3.24江戸川区マリーナ使用許可条件取消等請求事件。前者は土地購入に際し意図的に土地を分けて面積で決まる議会の議決を不要としたのではないか、不当に高額で購入したのではないかという疑惑。後者はマリーナという公の施設の廃止に伴う利用者の利用終了の問題です。 -----

昨日の雑感

昨日の自治体等法務研究部で扱った判例は、学校図書館司書退職手当請求控訴事件(中津市、福岡高裁H25.12.12)を豊田先生、最判H25(行ヒ)第35号H26.9.25を島崎先生のご発表。前者は、つまるところは民間でも多々生じている「○年の短期の契約期間と言いつつ、期間満了時に再雇用を繰り返し、数十年。賃金は固定」というやつです。公務員なので、一般職(正社員相当)か特別職(契約社員相当)かが争われましたが、一審と異なり控訴審では「実質的に一般職でしょ」というドラスティックな判断。これが通るなら同様の事案は多々あるわけで、地公体としてはかなり大変なことです。地公体の実情として、これらの人々に一般職としての俸給を与えたら財政が破綻するわけで、つまるところは「行政サービスを縮減する」ほかありません。小さな政府というやつです。日本では、例えば図書館にしても「無くせば貧しい人が本を読めない(財産による知識の偏在、階級固定化)」とかいった「正しい」議論が罷り通るのですが、その金は誰が出すのかと。ほんと、社会主義的な「大きな政府」が歓迎されますが、それが「持続可能」なのか真剣に考える必要があるでしょう。後者は固定資産税等を1月1日に登記簿に所有者と登記されている者に課しているところ、新築建物で1月1日以降に所有権登記した者に対しては、1月1日時点では所有者としての登記は存在しないが、その後賦課決定処分時までに「1月1日に所有者だった」ことを含む表題登記ができたので課税したのがどうか。結論として課税できるのは妥当でしょう。売買による所有権取得では1月1日時点所有者に全額課されることを前提に日割計算で分担しているので、不公平は生じません。租税法律主義(課税要件明確主義)に反しないと言えるでしょう。誰に課されるか明白なのですから。 -----

昨日の雑感

昨日の判例地方自治研究会は、「児童手当差押に係る地方税滞納処分取消請求控訴事件(広島高判H25.11.27)」を鎌田先生が、「秦野市・市職員の行政指導違法国家賠償請求事件(東京高判H26.1.30)」を木下先生が、それぞれご発表。前者はこれかなり重大な結論で、どこまで射程があるのか。普通、差押えは入金直後を狙います。遊びでやってるのじゃないので、当然です。入金される「債権」には差押禁止が(一部)あるとしても、預金には「色が付いていない」のが最高裁判例の結論であり、実務です。今回は下級審だから無視するほかないのか…なぜか鳥取県が上告せずに確定させてしまったので、モヤモヤ感が残ります。後者は、まあ行政指導とは所詮その程度のもの、窓口の人に常に正確な助言を求めるのは酷です。仮にそれが認められれば、行政はいかなる助言もしなくなるでしょう。つまり、弁護士に相談すべきなのです。 -----

条例による規制

昨日の判例地方自治研究会は、「固定資産税評価審査決定取消請求控訴事件(東京高判H26.3.27)」を尾関先生が、「府中市議会議員政治倫理条例上告事件(最判H26.5.27)」を松井先生が、それぞれご発表。

奇しくも(?)両方「府中市」なんですが違う「府中市」です。さて後者は条例による「2親等規制」の合憲性(違法性・有効性)が争われたもので、なんと高裁では条例が無効と判断されていたのです。最高裁では有効となったのですが、この規制、都会では「当然でしょ」だが田舎では「契約可能な相手(企業)が少ない中で厳しくしたら契約できない事態が生じかねない」のか、それとも逆に、都会では「そんなこと関係ないよ」だが田舎では「しがらみで恣意的に選択されかねないから条例で規制しないと」なのか。おそらく後者なのでしょうが…

それにしても、この規制は「当該契約が私法上無効となるものではない」から有効、というのも面白い(?)判断です。私法上無効としない条例規制(私法上無効とできない──法律による制限の範囲を超えるから──のですが)に喧々諤々とういのも、これが実務か…という感じです。


専決処分

昨日の判例地方自治研究会は、「専決処分による支出に関する損害賠償請求住民訴訟控訴事件(白井市、東京高裁H25.8.29)」について上林先生の、「未徴収債権の不納欠損処分等に関する住民訴訟事件(福岡地裁H26.1.30)」について?田先生の、それぞれご発表。

前者は2013/10/16に書いた事案と社会的事件としては共通しています。結局控訴審判決では市長の個人負担という結論で、これをどう評価するか。市長選に最大の公約として掲げた政策が実行不可能なら市長を辞任するのが筋だし、そこまで短兵急(?)でなくても、次の議会選挙まで待って議会の構成が変わることを期待するのが筋でしょう。とにかく、市長として法律上可能な限度までやって実現できないなら、それは「仕方ない」ことであり、そこから先は「革命」ですから…


懇話会など

本日の判例地方自治研究会は、出雲市自治基本条例住民訴訟事件(松江地方裁判所平成25年8月5日判決)について迫先生、固定資産評価審査決定取消等請求事件(最高裁平成25年7月12日判決)について鵜之沢先生が、それぞれご発表。前者は市民懇話会のような機関は地方自治法上、法律又は条例の根拠が必要なはずなのに、それが無いぞという話。判決の結論は、地方自治法に定める機関ではないというもの。同種の他の裁判例では、機関であるので違法だが損害がないので請求棄却というものもあると。だいたい、機関なら委員に支払うのは報酬であり基準を定める規程もある、しかし機関でないので報償費という名前で支払うも規程は準用するという、姑息なことをしているわけです。まあ、株式会社の第三者委員会にしても、都合のよい人を委員にするため、「長」が「自由裁量」で設置するのですよねえ。


昨日の雑感

昨日の判例地方自治勉強会では「『ORC(オーク)200』公有地信託費用補償請求事件(大阪地判H25.3.7)」を三輪先生が、「行政財産の目的外使用に係る住民訴訟控訴事件(札幌高判H24.5.25)」を石井先生が、それぞれご発表。前者はバブル期に計画した高級分譲マンション群(?)が、工事費用が当初予定より多くかかった一方でバブル崩壊により収益は上がらず大赤字、それに大阪市が旧信託法36条3項の「受益者による受益権の放棄」をしたというもの。この旧信託法36条3項は、もともと委託者と受益者が同一の「自益信託」の場合は適用されるべきでない内容で、立法の不備と言っても過言ではないでしょう。なにしろ、「黒字ならそのまま、赤字なら受益権放棄」で赤字の可能性がゼロ、ノーリスクということですから…本件の請求額は639億円なんですよ。現在の信託法(平成19年9月施行)では99条1項但書で自益信託の場合は受益権放棄ができないことを定めています。後者は今金町の公営温泉施設の駐車場を隣接する会社に使用許可&使用料減免したことに対する住民監査請求→住民訴訟。一審と二審で「使用許可と使用料減免は別個のものか一体のものか」で判断が分かれましたが、この種の話は、もともと「タダ(格安)なら使わせてもらいますが、そうでないならいりません」というものじゃないですかね。法理論はともかく実態として一体なわけで、二審はそこを見たのなら自然なこと。



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