今日の雑感

ツイッターで名誉毀損やプライバシー侵害をされたという「憤懣」の半分は、ツイッターを見なければいいというだけのものであろう。つまり、現実には何も被害が発生していないものである。残り半分とて、警察が動くところまでのものは稀である。

サイバー判例回顧

本日のインターネット法律研究部は消費者問題特別委員会と共催で、M教授による昨年から今年にかけてのサイバー判例回顧。注目の事件は、マイニングプログラムの無断インストールとウィルス罪の成否(横浜地判H31.3.27、例の仮想通貨/暗号資産のやつ)、弁護士会懲戒の大量申立てと不法行為(横浜地判H31.4.11、余命ブログのやつ、まあ綱紀委員会で一括処理していますが)、ドメイン名のレジストラ/DNSサーバ管理者と特定電気通信役務提供者(札幌高判H31.3.19、例の写真家の件。侵害情報の流通の一部を構成しない)、ブロッキング差止請求訴訟(東京地判H31.3.14、漫画村の件の流れで「今やるつもりはない」)、ツイッターによる裁判記事紹介と裁判官分限処分(最決H30.10.17、例のO裁判官の件)、というところ。その他重要判例多数。

自動運転車による事故

週刊新潮が「『自動運転車』で初の惨事!暴走コンピューターに大黒柱を奪われた母娘の慟哭」という特集記事を出した。先週金曜日のインターネット法律研究部は、この件についてだった。この事故は昨年4月29日に起きたものだが、通常の事故とは全く異なる態様だった。まず高速道路の追い越し車線で自動車(キャラバン)が渋滞にさしかかり急ブレーキしたのにバイクが追突した事故が起きた。その事故から数分後、その処理のために停車中のバイクにテスラ車が高速で突っ込んできて、バイクを跳ね飛ばし、その場にいた今回の被害者の頭を轢過したのだ。被害者は死亡。テスラ車の運転者は居眠りをしていた。ここまでだと、よくあるパターンの居眠り運転による事故のように思えるが…テスラ車の運転手の刑事裁判で、弁護側は無罪を主張したのだ。その理論構成は、運転者は居眠りしていたが、テスラ車は自動運転システムにより問題なく走行しており、事故の直前にシステムが故障して前方の障害物を認識せず事故が起きた。運転手が起きていても回避不能だったというもの。まあ結論から言えば、今の日本の法律では自動運転技術はレベル2までしか走行を認めておらず法的責任は運転者にあるので、普通の居眠り運転と同様に有罪になるだろう。問題はテスラ社が売り文句で「(運転者は)何もする必要がありません」と過大に広告宣伝していること。とは言っても、高速道路をこの事故直前まで全く問題なく自動運転していたのであり、自動運転技術はここまで来ているのも事実。ここで管理人が思い起こしたのが、2016年3月のアルファ碁対イセドルの五番勝負。アルファ碁は世界最強クラスの棋士イセドルを圧倒したが、第四局では失着(による形勢悪化)後に級位者でも打たない異様な悪手を連発した。そう、人間とAIとでは「考える」という中身が全く異なるのだ。今回の事故、事故処理のため時速10kmくらいで渋滞していた車線で前の車が車線変更し、事故処理で停車中のバイク等が目の前に現れた。人間なら絶対に加速しない状況だったのだ。それが「前には何もない」と人間なら絶対にしない誤認識をして、テスラ車は急加速して突っ込んだ。これはアルファ碁対イセドルの第四局のアルファ碁の「人間なら絶対に打たない」悪手と同じだ。2017年5月のアルファ碁対柯潔の三番勝負では、アルファ碁は全く隙が無かった。テスラ車も日々世界中でデータを取っており、数年(いや数ヶ月?)もすればこの種の事故は起こさなくなるだろう。しかし、技術の進歩の途中でこのような事故が起きたこともまた事実。アルファ碁対イセドルの第四局終了後の記者会見で「これが医療の手術で起きたら?」と問われた開発者デミスハサビスは「まだ開発途上のプロトタイプである」ことを強調した。


コインハイブ事件

本日のインターネット法律研究部は「サイバー犯罪〜無罪判決が出た不正指令電磁的記録に関する罪を中心に」と題してO先生のご発表。今年3月27日に無罪判決が出たのがコインハイブ事件。コインハイブとは(判決文によると)コインハイブチームのウェブサービスで、モネロという仮想通貨をマイニングするジャバスクリプトを登録者に提供し、取り分はチーム3割、登録者7割。このスクリプトをウェブサイト内に設置すると、閲覧者が気づかない間に勝手に閲覧者のPCでマイニングするのである。ここだけ聞くととんでもないプログラムだが、そもそもジャバスクリプトは広く使われていること、設定により閲覧者のPCへの負担をごく小さく出来る(他の一般的な広告表示プログラムと大差ない)こと、当該ウェブサイトを離れたら終了すること、と聞いたら別の評価も出てくるだろう。今後は広告表示や課金制に代わるマネタイズとなるとも言われているという。これを聞いたら管理人的にはかなり肯定的に評価したくもなる。広告は極めてウザいしPCへの負担も結構大きい。課金制で機能する役務などインターネットの世界では極めて限定的である。実はコインハイブチームは閲覧者の同意なしにマイニングが開始しない新たな実装をしたという。完璧だ。唯一の問題点(重大な!)である「知らない間に勝手に…騙された!」が無いのである。管理人的には初めて仮想通貨を肯定的に評価するぞ。こういう用途があったか…これは今後のインターネットでスタンダードになる十分な可能性がある。ていうか、なるべき必然性がある。これでインターネットはテレビを完全に駆逐するだろう。ただし、スマホにも出来るなら、であるが(どうやらそうらしい!)。本件被告人は略式起訴罰金10万円に異議を申し立て、7回にわたる公判前整理手続を経て無罪判決を勝ち取ったわけで、大変お疲れ様である。ちなみに被告人が得た総収益は800円程度だったという(振り込まれる最低金額5000円程度に達しないので実際はゼロ円)。このようなインターネットの有意義な新技術については、刑事罰は謙抑的であるべきで、そうでないと他国に出し抜かれるのだ。判決文においても「その当時新聞等のマスメディアによる報道はもとより捜査当局等の公的機関による事前の注意喚起や警告等もない中で、本件プログラムコードを設置した被告人に対していきなり刑事罰に値するとみてその責任を問うのは行き過ぎの感を免れない」とする。なんかやけに人情味があるぞ。それと、検察は控訴したとのこと。他にも同様に検挙していて、他の人は異議を申し出ず有罪が確定していると。うーん…

ツイッターと外国企業

昨日の続き。ツイッターのアカウント情報(IPアドレスとタイムスタンプ)を開示させるには、ツイッター社を相手方に仮処分を申し立てることになる。ツイッター社は本社しか受け付けないので本社を相手方にする必要がある。すると申立書を英文に翻訳しなければならない。もちろんその種の業者は存在するが、30万円とか40万円とかかかる。それでツイッター社が有益な情報を持っていない可能性もあり、ツイッター社は持っていても犯人がプロキシサーバーを噛ましていて結局犯人に辿り着けない可能性もある。つまり無駄に終わる可能性もあるのである。それが現実。

ここ数日ファーウェイについてグーグルがサービスを停止する云々と大変興味深い流れであるが、中共が本当に恐ろしいのはここである。大陸中国では中共の強制によりその他の世界で使われているグーグル等のサービスではなく中共の息のかかった中国企業のサービスを使うのだ。バイドゥとか見聞きしたことがあるだろう。国民が広く使うサービスが外国の一私企業のもの、というのは「首根っこを押さえられている」ということ。従って米国の強硬姿勢はトランプ大統領の個人的問題ではなく、米中の覇権争いであり綺麗事ではなくガチの殴り合いで、互いに出来ることは「何でも」やる。米国で温いことを言っている政治家や報道関係者には中共の金が流れていると見て間違いないのである。


インラインリンクと著作権

本日のインターネット法律研究部は、インラインリンクと著作権法の論点と題してS先生のご発表。著作権法のサイバー法化、プロ責法の使い勝手の悪さ。省令7号は侵害時のタイムスタンプの開示を認めるが、それは侵害情報のアップロード時だけのように読める。しかし一部のプロバイダはログイン時のものしか保存していない。実務ではアップロードの直前のログイン情報ならなんとか…という状況だが、昔は箸にも棒にもかからなかった。なぜかログアウト時のものを保存しているプロバイダもあるようだ。論点の実益はリツイートにある。なりすましアカウントを連続してリツイートしているアカウントは同一人物の可能性が高い。数年前のタイムスタンプをもらっても仕方ない。直近の投稿の情報が欲しい。アイコン画像の侵害の場合(リツイートアイコン事件)。権利者に無断でアップロードされた画像をインラインリンクで利用する行為が著作権侵害ではない!?インラインリンクは1993年にマークアンドリューセン氏が提唱しブラウザを開発した。それがIEに繋がる。日本でも20年前からディスプレイに関する権利を創設するほかないのではないかという議論あり。公衆送信権侵害の主体は送信可能化をしたという前提がある。アップロード行為が正犯行為であり、リンクを貼る行為は正犯行為たり得ない。しかし近時判例では認めたものあり。今後の解明が待たれる。キャッシュへの保存は複製権の侵害ではない。一時的な保存なので有形的な複製ではないため。それを増幅しても同じ。その他諸々。


今日の雑感

今はググれば何でも出てきます。ただし、故意又は過失により間違っている情報も多い。書かれた時点では正しくても今は違う、という情報もあります。でも、そんな情報の洪水の中から正解「であろう」結論を導き出す能力がインターネットリテラシーであり、それは今、世界中の人がトレーニングしているのです。OJTで。従って、インターネットリテラシーがある人には、法律相談で回答すべき内容はあまりない、あとは具体的なその案件で弁護士に依頼する費用と期間くらい、ということになります。


攻撃と反撃

攻撃すれば、反撃される可能性がある。もちろん、どちらが正義かは関係ありません。物理法則(作用反作用の法則)のようなものですから。攻撃する時、反撃される可能性を考えるのが大人というものです。想定される反撃に対し、どのように防御するか。そこまで考えてから攻撃するのが、成熟した大人というものなのです。そもそもその攻撃、あなたの人生に必要なのですか?


デジタルプラットフォーム

本日のインターネット法律研究部(今年度から管理人が部長)研究会は「一から始めるデジタルプラットフォームビジネス〜決済の仕組みを中心に〜」と題してT先生のご発表。マッチング型とメディア型に分類し、具体的かつ詳細な内容で、非常に充実していました。後者の例であるクラウドファンディングで融資型では利用者である個人が貸金業登録する必要が生じてしまうため、クラウドファンディング事業者が自ら貸金業と第二種金融商品取引業の登録をし、一般個人による貸付はクラウドファンディング事業に対する匿名組合出資である、という仕組みとすると。

電子書籍と「消滅」

マイクロソフトが電子書籍事業を廃止し本は「消滅」するというニュース。電子書籍は紙の本と比べて圧倒的な優位性があるが、この欠陥もある。電子書籍は物理的には何も得ていないのであり、文章を読む(絵を見る)権利を得ているだけ。マイクロソフトは返金するとのことだが、なんて良心的なのか。利用規約にどう書いてあるかは知らないが、返金する義務など書かれているとは到底思えない。アーサー・C・クラークの小説に何度も書かれている設定として、未来において巨大隕石の落下により全地球規模の異常な電磁波が発生し電子データがほとんど失われた(その間の人類の行為の記録が無くなった)というものがある。太古の昔から、石碑は残り紙もある程度残っているが、CDやDVDやBDは紙より残らず、電子データは全く残らない。圧倒的な利便性から市場原理により電子データを使うことはやめられないが、原発と同様にその巨大な欠陥が露呈した時に責任のなすりあいが生じるのだろう。


破産者マップ騒動

破産者マップ騒動、個人情報保護法に関する新たな論点か!?と思いましたが、よく考えてみたらそんなこともないようです。法の想定する典型的な場合かどうかはともかく、第三者提供には該当するのでしょう。結局、本件も他のインターネット事案(漫画村等)と同様、「誰がやっているのか」を突き止める困難性という、そこだけの問題です。ただ、そこが実務上大きな障害なのです。そこについては法律はあるので後はITの問題であり、むしろ弁護士よりSEとかのほうがこの際役に立つ?かもしれませんが、思うに、ツイッターは偽名でアカウントを作るにせよ、インターネットを契約プロバイダでやっていたらIPから辿り着くことは可能です。ではその最初にネット接続するのを無料Wifiでやっていたらどうか。無料Wifiでどこまでのことができるかはさておき、そちらから辿り着くことは不可能でしょう。ただ、サーバーにデータを蔵置する手法では、事実上、レンタルサーバー会社と契約する必要があります。件の漫画村もそれで米国のサーバー会社から開示を受けたというニュースが以前ありました。ではそこのサーバー会社との契約を偽名でできるか。これはWhoisの代行業者との契約と併せてということになりますが、そこが偽名でできればそちらから辿り着くことも不可能になります。支払いは仮想通貨を使えば可能でしょう。しかし、漫画村ですらそこまでやっていなかったということは、実務上はそれを受け入れるサーバー会社が(一般人が利用可能な範囲では)存在しないのかもしれません。差止めについてはサーバー会社が従えばよいだけのことですから、そちらはIT的には不可能にはできませんが、逆にそちらは法的に強制できるかの問題があるでしょう。


ビッグデータとアフィサイト

本日のインターネット法律研究部は前回に続き「インターネットの法的論点と実務対応 第3版(管理人も共著)」の執筆者の中からN先生のビッグデータとF先生のアフィリエイトサイト(リーチサイト)のご発表。前者は、従来のデータ処理は構造化されたデータで抽出されたデータの因果関係の重視、ビッグデータは非構造化データが中心で可能な限り全てのデータを扱い相関関係の重視と。国内の事例で建設機器メーカーが販売した建設機器のGPSデータから稼働状況を分析して与信管理や債権回収にも活用とか。後者は、アフィリエイトの商流はアフィリエイターと広告主とASPがあり、関係法令は景表法、健康増進法等、著作権法、不正競争防止法。H 30.6.15の課徴金納付命令が初めてアフィリエイトに言及。リーチサイトは例の漫画村云々。知的財産戦略本部の検討会議は結論が出ず宙ぶらりんとのこと…

eスポーツと景品表示法

昨日のインターネット法律研究部は、「Q&A インターネットの法的論点と実務対応 第3版(ぎょうせい)」の共同執筆者のうち管理人とS先生で担当部分を発表。管理人は「動画投稿サイトの法的論点」を、S先生は「eスポーツにおける懸賞」を主に語りました。特に後者は今なにかと話題ですが、そもそも景品表示法(の景品額規制)は「過大なオマケで粗悪品が売れて、真面目な競合製品が売れなくなる」という「悪貨が良貨を駆逐する」ことを防ぐ趣旨です。でも、eスポーツの「景品」とは何ぞや?…それは賞金。例えばストV大会で優勝者に100万円の賞金を出す場合、出場者はその賞金に釣られてストVを買うことになる。そういう理屈であり、実は、業界団体が認定するプロ制度が出来ましたが(ゲームごとにプロ認定するというのも仕方ないながら煩雑なことです)、プロであるほど景品表示法に違反する理屈なのです。経産省(世耕大臣とか)が何を言おうと、そういう構図であるのは間違いありません。一方、プロじゃない人は、高額賞金の大会が開催されたからといって、自分がその賞金を得るとは考えない。盛り上がっていて面白そうだからストVを買っても、それは賞金に釣られたわけではない。従って景品表示法に違反するわけではない…ここが議論が錯綜するところなのです。そもそもプロならOKとした場合、プロ認定が出来る立場はどのようにして正当化されるのか。理屈は全くありません。何しろ、カプコンが認定するなら、それはストVを売る目的が露骨であり「賞金が欲しければプロ認定を受けてストVを買って練習しろ」であって、あからさまに景品表示法に違反するでしょう。ではカプコンが関与しない者(団体)、となると誰でも当てはまるわけです。そのへんのカプコンと無関係の一般人が「俺がプロ認定をする。お前はストVのプロだ!」と言えば、それで通るのか。業界団体と何が違うのか…思うに、海外ではeスポーツは巨額の賞金で盛り上がっているわけで、管理人は詳しくは知りませんが、賞金はゲーム会社と無関係に出ているのでしょうか?そんなことはないと思います。直接または間接にゲーム会社から金が出ていると思いますがどうなのでしょう。むしろ当たり前に思えます。粗悪品云々は生活必需品だから必要な考え方であって、純粋な嗜好品・娯楽品には当てはまらないと思います。つまりそういう物には無用の規制ということです。



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