一力遼がNHK杯で優勝

一力遼が芝野虎丸を倒してNHK杯で優勝。棋聖vs名人、今これより良い決勝の組み合わせはない。芝野は手堅い打ち回しで古碁(元丈・知得?)のような打ち方。読み切れない手は打たない主義か。それで評価値は下がるが、どうせ相手が打ち過ぎて評価値は逆転する。一力もまさにそうなった。これが芝野の碁なのだ。「後の先」というやつだ。しかし芝野は逆転した評価値を維持できない。そこがまだまだだ。才能は一力を上回るのに、努力と覚悟が足りない。逆に一力は、井山との碁もそうだったが、評価値が非常に悪くなっても土俵を割らずに踏ん張る(あの変なアキ三角の手、人間の感覚には無い手を読んで、しかも打てるのはAIでどれだけ勉強したのか)。踏ん張って逆転する。その根性、精神力は逞しい。立派になったものだ。第一人者の資格あり。あと3年は一力の天下だ。この3年のうちに世界戦で優勝しなければならない。一力ならやってくれると思う。そう思わせる碁打ちである。


一力遼が棋聖を防衛

井山投了…一力防衛。

初日で既にオワっていた。しかし井山は勝負手を連発する。奇手・魔手・妖手・幻惑手…それらを一力は悉く完璧に受け切った。評価値はブレず。10タコの頃とは別人のようだ。素晴らしい。NHK杯でも井山に勝ったし、もうこれで一力は井山を「卒業」だ。ここまで鍛えてくれた井山への恩返しは世界戦優勝しかないぞ、一力!


第6局

昨日から本日にかけて打たれた棋聖戦第6局、黒番一力・白番井山。

この碁はねえ…井山凄い。初日で優勢にしてから二日目も全く緩まず最後まで押し切った。大乱戦なのに評価値が大揺れすることなし。まさに完勝。早い終局で白中押し勝ち。

うーん、井山凄い。カド番でこれかあ…歴史を逆回転させることは、秀行にも光一にも立誠にも栩にもできなかった。チクンにはできた。敬吾も少しできた。井山にできるのか…いや一力はそれを認めないと思う。時代を逆行させては第一人者ではない。最終局は大注目である。


第1局

いよいよ始まった十段戦、芝野虎丸十段に挑戦するのは井山裕太。握って、黒番井山・白番芝野。

いやはや、ひどい。86までは互角ながらやや黒が押し気味で進んでいたのに、87とはいったい何だ。88に89で90と自らサカレに行くとはひどすぎる。いわゆる「作り手」というやつで、碁の法に無い、力自慢ならぬ技自慢のアマが無理矢理ひねりだしたような手だ。こんな手は評価値が下がるに決まっているのだ。この後は一瞬だけ評価値が互角に近いところまで戻ったことがあったが互角になることはなく早い終局、白中押し勝ち。

あのさあ、井山っちよお…こんな手が芝野に通用するわけないだろ…一力も芝野も正しい手を打つが、井山は無理な手を打って勝つことに喜びを感じている。こんな曲芸みたいな手、受け狙いのハイリスクハイリターンな一発勝負のような手を打つようでは、もう勝つことを目指してないな。遊びの碁だ。趣味の碁だ。やれやれ…地元なのに…


古碁の価値3

「古碁×AI 秀和と秀策に学ぶ勝負術」は「大橋拓文・寺山怜」著、2021年7月31日初版である。もう2年半も前の本で、油断すると本屋から無くなってしまう(日本棋院に行けばいつでも買えるだろうが)。古碁とAI、まさに管理人の関心のドンピシャであり、今まで買ってなかったのが迂闊だった。古碁の価値は以前書いた(記事1記事2)が、この本は古碁の価値を具体的に見せてくれる。秀和と幻庵のあの碁も幻庵にチャンスがあった。秀和と算知の碁で秀和に失着あり。秀策と算知の碁で秀策のAI超えのヨセの妙手。秀策と秀和の碁でAIは大中小中がわからない。その他諸々、本当に面白い。ぜひ、算砂以降の歴代名人の著名な碁を一通り、本書と同様にAIにかけて解説して出版してほしい。


第5局

昨日から本日にかけて打たれた棋聖戦第5局、黒番井山・白番一力。

この碁はねえ…初日午後から井山が無理を打った。構想が強引過ぎる。力自慢のアマのような打ち方だ。それで初日で実質的にはオワった。二日目も井山はクソ粘りしたが、一力は冷静に対応。前局より早い終局、白中押し勝ち。

一力、地元で完敗した雪辱をすぐに果たした。心技体が全き状態だ。今が一力の棋士人生で最も打てている。井山のゴチャゴチャに惑わされない。次局で決まるだろう。井山はもう、一力と芝野には勝てない。かつて張栩が「井山に抜かれた。もう勝てない」と思ったのと同じことを、今井山は思っているだろう。


段位制について考察22

NHK杯の出場棋士は50人は、基本的に賞金ランキング上位50人である。トーナメントなので、まず32人を考え、それぞれにシードを付け1.5倍して48人、2箇所シードを無くして50人となる。つまりシード棋士は14人である。50人というのはキリの良い数字であると共に、週1回で1年放送する必然性のある数字である。一方、管理人の私案ではレーティング14位以上が七段以上である。直近の実力が七段以上の棋士をシード棋士にすればぴったりである。14という数字が奇妙な偶然の一致である。賞金ランキングだと女流棋戦で稼げる女流棋士が有利となる。それでも今期は女流棋士は4人しか出場していない。一方、レーティング50位以内だと今は2人しかいない。一昔前までは常にゼロであった。管理人としては、基準日(例えば1月1日)のレーティング上位50人を候補とすることを基本とし、ただし女流は少なくとも4人出場する、というのが良いと考える。つまり今のレーティングならレーティング48位までの棋士と51位以下の女流棋士の上位2人となる。牛の代わりに謝が出場することになる。ちなみに最年長は48位のチクンだ。レーティングは棋士の強さを最も正確に反映するだろう。レーティングで出場を決めるなら単純であると共に最も公平である。例えばプロ野球は常に打率を出している。それこそ一打席毎に。ファンはその数値を見て選手を評価し、応援するのである。技芸、それも「闘技」においては、「強さ」は常に客観的かつ正確に数値で示すべきである。その動きがファンを一喜一憂させる。そういう「わかりやすい変化」にファンは食いつくのだ。囲碁も一対局毎にレーティングを出すべきである。管理人の私案では毎月末日締めで翌月初日に段位を改定する。「○○棋士、今の棋力は○段だ」とか「□□棋士、この局に勝てば昇段だ」とか、ファンが言えるのである。


第4局

昨日から本日にかけて打たれた棋聖戦第4局、黒番一力・白番井山。

この碁は、基本的に井山がジワジワと優勢になっていき、中盤以降、多少の評価値の揺れはあったが、井山が劣勢になった場面は無かったと思う。見事な寄り切り、白中押し勝ち。

井山、まだこんな横綱相撲ができるんだ。一力相手に完封、全盛期の打ち回しである。これが七番勝負で4回できれば勝てるが、残念ながらもう脳の体力が衰えているんだよなあ。管理人の予想では4-2で一力、この予想は変更の必要を感じていない。そこまで既に一力の方が格上なのである。次局で管理人の認識を覆してくれるのか、楽しみである。なにしろ一力の地元で一力を粉砕する「相手の心を折る」圧勝はまさに鬼、全盛期の井山なのだから。


段位制について考察21

ところで一昨日、女流棋聖戦で上野梨紗が仲邑菫を2-1で倒してタイトル奪取した。上野は2006.6.24生であり、仲邑が2009.3.2生なので、上野は仲邑より2年8ヶ月も歳上だ。姉と比べてまだまだと思っていたが、藤沢里菜と姉を倒して挑戦者になったのだから文句なしだ。仲邑も前期に藤沢を倒して挑戦者になり上野姉からタイトル奪取したのだから文句はないが、韓国棋院に移籍するのである。タイトル者のままで移籍(つまり日本棋院は引退)されるところだったので、小林覚が一番ほっとしているのではないか。昔から囲碁界で兄弟姉妹棋士は多く、その場合は最年少者が一番強い。小林覚自身がそう。つまり梨紗は姉を超えるということだ。女流棋士初の公式七大タイトル挑戦は藤沢里菜でもなく上野姉でもなく、上野梨紗になりそうな情勢である。本来なら仲邑菫がその役だったのだが…ほんと、以前も書いたが小林覚はこの事態をどう捉えているのか。ところで上野梨紗は二段、仲邑菫は三段である。今回のトーナメントの参加棋士では、牛栄子が四段、上野姉が五段、向井千瑛と佃亜紀子が六段、藤沢里菜と鈴木歩と謝イミンと小山英美が七段、吉田美香は驚愕の八段である。以前も書いたが、年配の女流棋士の段位のインフレは酷過ぎる。これも小林覚はどう捉えているのか。なお男性棋士の段位のインフレも酷いのだ。もちろん小林覚がこうしたわけではない。上の世代がやったことだ。それでもその尻拭いの大改革をするのは今の理事長である小林覚の役割である。


井山裕太が十段戦の挑戦者に

昨日打たれた十段戦挑戦者決定トーナメント決勝戦、井山vs許、結果は井山の中押し勝ちで、芝野虎丸十段への挑戦者は井山裕太と決まった。「家元がやられたようだな…」「フフフ…奴は令和三羽烏の中でも最弱…」「井山ごときロートルに負けるとは三羽烏の面汚しよ…」である。一力と芝野ははっきり井山を上回った、正確には井山が落ちて一力と芝野が上がって上下関係が入れ替わったわけだが、許だけ取り残されている。許は才能はあるのに努力がまだ足りないということだろう。努力限界値100に対して、芝野が90、許が95努力しているとして、一力は120努力している。才能限界値100に対して、芝野が100、許が85、一力が90といったところか。それにしても以前も書いたが、井山はかつて絶対王者として挑戦者を叩き潰していたのに、今はその相手に自ら挑戦していくという、精神力の強さは限界突破である。


第3局

昨日から本日にかけて打たれた棋聖戦第3局、黒番井山・白番一力。

この碁はねえ…井山の悲劇だ。中盤には井山優勢まで持って行ったのに、そこからの構想が悪く、敗勢になって、無意味に粘って、花見コウのコウダテですらなく直接潰された。白中押し勝ち。

チクンが「地と模様を超えるもの」で呉清源について言っていたのと同じだ。呉清源はコミ無し白番で勝つために全体的に無理気味な碁になり、コミ有り碁ではむしろ勝率が悪かった。井山は七冠達成の頃から誰と打っても明白に自分より弱いので無理手でも通用してしまっていた。自分が衰え、一力が上回った時、無理手を咎められて負けることになる。時代は完全に移り変わった。


第2局

昨日から本日にかけて打たれた棋聖戦第2局、黒番一力・白番井山。

この碁は、序盤の左上で黒が大石を取られたが実は取らせたのであって外勢を得て左下白を攻めて形勢は黒やや良しという、井山のヨミを一力の形勢判断能力が上回った出だしだった。しかし二日目の右下の打ち方が一力変調か。今度は井山の打ち回しが冴え、形勢を白良しから白勝勢に持って行った。右辺のコウを解消して下辺の黒を生かして全く損ではないという判断も素晴らしい。そのまま押し切って白中押し勝ち。

井山衰えず、という碁だった。こういう碁を毎局打てれば井山の天下は続くが、それは無理だろう。全盛期を過ぎた今の井山では七番勝負でせいぜい2局か。一力も今局の負けは引きずらないだろう。次局に期待。


今日の雑感

久し振りの弁護士の新春囲碁会。管理人はこの会では七段とされており、かなりきついのが正直なところ。自分としては六段が妥当だと思っているが、高齢の先生が多いから相対的に段位が高くなるのもやむなしか。ただ今回は五段の先生に二子の置かせ碁で中押し勝ち、七段の若い先生に互先黒番で二目半勝ちできた。そして指導碁、大西研也プロに三子(三面打ち)で二目負け…プロの石を愚形にして喜んでいた箇所、そんなことをしなければ外からオサエが利いてそれだけで五目くらい違ったと。なんともはや。対戦相手の先生が早く帰られたので手空きになって森智咲プロに三子(三面打ち)で打ってもらい「自分の打ちたい手を打つ」を貫いた結果、中盤で酷い形になって粘ったが中押し負け。やはりヘボアマが打ちたい手は悪手なのだと納得。



calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

profile

links

categories

recent comment

archives

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM