バカッター訴訟

近時よく聞く「バカッター」のニュース。犯人に損害賠償請求訴訟を提起する、それはそれでいいでしょう。ただ、有意義な行為なのかは微妙です。つまり、今後の被害の予防に資するか、ということ。思うに、バカッターの犯人は「クビ」になる危険はさすがに理解しているわけで、クビになっても惜しくない仕事だからやるのです。絶対にクビになりたくない、要するに給料が良い仕事なら、そんなことはやりません。ゴミみたいな仕事だから、カスみたいな行為をするのです。本人は意識していなくても、資本家の搾取に対する労働者の「せめてもの抵抗」という構図になっています。大きな視点で見れば、ですけど。企業としては「それでも(訴訟を)やる」ということでしょうが、もっと直接的な障害があります。それは、損害論。損害賠償請求は、文字どおり企業に発生した損害の賠償を請求する以上、何円の損害が発生したかを具体的に主張立証する必要があります。株価が下がったからといって、それは直接的には株主の損害であって企業の損害ではありません(自己株式で根拠づけるのは技巧的に過ぎるでしょう)。それに、株価は様々な理由で上下するのであり、バカッターとの因果関係をどこまで裁判官に認めてもらえるか。例えば、株価が1000円でバカッターにより900円に下がったが、その後1000円に戻ったら、果たして損害があったと言えるでしょうか。本来なら1100円だったはず、と言えるでしょうか。売上が減り、利益が減った。これは損害です。しかしこれもバカッターとの因果関係をどこまで認めてもらえるかの問題があるほか、立証においては、企業の会計資料を詳細に開示する必要があります。基本的に前年同期との比較になるでしょうが、バカッター以外の要因の影響がどのくらいか、それを様々な企業秘密(利益率とか客の数とか客単価とか…)を用いずに説明できるでしょうか。そういったことを全て証拠として提出する、裁判は公開ですし当のバカッター本人に「これを見ろ」と見せつけるわけですから、それをインターネット上に流されることは覚悟しなければなりません。刑事では威力業務妨害は成立するかもしれませんが、量刑においては同様に損害の大きさが問題となります。すると(前科がなければ)一発で実刑とはならないでしょう。バカッター本人は実名が出れば今後の就職で検索されて採用を拒否されるという大きな社会的制裁を受けるわけで、それ以上を科すことに企業が労力を割いてもあまり有意義ではありません。法律用語で言えば、特別予防は社会に任せて、企業は一般予防に労力を割くべきでしょう。そしてそれは、前述のとおり労働者の待遇改善、つまり「ここは絶対にクビになりたくない」と思わせる待遇、要するに給料を同業他社より高くするのです。労働者が明確に意識するほどにね。あと勿論、福利厚生も。


関連する記事
コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< April 2019 >>

profile

links

categories

recent comment

archives

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM