政治的言論の自由

とある政治家の北方領土の戦争による奪還の発言。これを不適切として所属政党が除名するのは良いでしょう。政党は政策により結びつく私的な団体ですから。国会決議で譴責するのは、まあ仕方ない。国会として、議員による国家国民に有害な発言には不適切であると見解表明することも、場合によっては必要でしょう。しかし、辞職勧告は行き過ぎです。国会議員は選挙により選ばれた国民の代表であり、それが政治的発言を理由に「多数派により」無理矢理議員の資格を奪われる。これは政治的言論の自由の重大かつ根本的な侵害です。そもそも政治家の発言の適否は主権者国民による選挙で判断されるべきもの。当該発言を是とする国民もいるでしょう。当該発言を非とする国民が多数派だから、当該議員の議員資格を剥奪する。そんなことは民主主義国家としてあるまじきことです。そこがわからない政治家は民主主義的でないし、政治的言論の自由を無視する軍事独裁国家的感覚の持ち主です。

ロシアが怖いと。なるほどロシアは怖い国です。昔はもっと怖かった。128年前の大津事件を思い起こさせます。時の首相松方をはじめ政治家はみんな、津田を死刑にせよと裁判所に圧力をかけた。しかし法律上は死刑は不可能。大審院院長児島が踏ん張って、判決は無期徒刑。三権分立・司法権の独立を守り、文明国との評価を高めたのです(裁判官の独立の点で課題は残りましたが)。

管理人は中国の王朝の中では北宋を最も高く評価していることは以前に書きましたが、石刻遺訓の「言論を理由に士大夫を殺してはならない」が大きな理由の一つとなります。太祖趙匡胤、中国史上最高の名君でしょう。しかし人類社会は常に進歩しています。1000年以上前の政治家にも劣る感覚の持ち主は誰でしょうか?


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コメント
ありがとうございます。

制度が適切であることと運用が適切かは別というのはおっしゃる通りですが、憲法上、除名の理由に制限は無い以上、こういう使い方がされる(また使われていないですが)という危険が内在していたのかもしれませんね。
  • 名無し
  • 2019/06/04 5:13 PM
最初に憲法何条の、、とおっしゃるところが弁護士として大変ご立派だと思います。そして、制度が適切であることと、運用が適切であることは別論、というのは、この件に限らず、広く言えることではないかと思います。
  • N.Yamamoto
  • 2019/06/01 10:45 PM
日本国憲法58条2項但書ですね。これは院内の秩序を乱した者への懲罰であり、むしろ政治的言論の自由を守るためのものです。過去の事例としては2名、1名は予算案に反対討論しながら賛成票を投じた者、1名は不規則発言をした上に陳謝を拒否した者、のようです。もちろん制度が適切であることと運用が適切であることは別論ですが。
  • 管理人
  • 2019/05/31 6:27 PM
確かに、議員はそれぞれの選挙区の有権者に選ばれているわけで、選挙区の有権者が議員にすべきでない人だ、と思って次の選挙で落選させることは当然あり得るとしても、他の議員の多数で除名すれば、それはその選挙区の民意を抹殺することになるような気がします。
でも、じゃあどうして、憲法に議員の除名処分という、多数派の横暴のようなことが規定されているのでしょうか?管理人さんはいかが思われますか?
  • 名無し
  • 2019/05/30 7:57 PM
おっしゃる通り確かに行き過ぎですよね。その行き過ぎが当然と受け止められていることが問題ではないでしょうか。レベルが低くて申し訳ないのですが、こちらを拝見して思い出したことがあります。
小学校三、四年のころ、民主主義は、多数決で決まるものだと、教師が教科書読みながら言いました。クラスで何を決めるのも『正』の字を黒板にかき、多数決で決まっていました。私は、何か、釈然としない思いを持ちました。しかし、『多数決』は、『完全なる良き、正しいこと』と教えられてましたから、何も言えません。その頃を過ぎても、民主主義=多数決を表す、イラストを目にした記憶があります。戦前、戦中も、言論統制の上に民意は一億結集だったと言われています。現在の日本は、言葉狩りが極めて強くなっていると感じます。政治的発言に限りません。使ってはいけない言葉、表現がどんどん増えているように思います。差別、誹謗中傷にたいして、表面上だけの配慮に躍起になっているから、過剰反応的現象が起きているのではないかと思います。私の世代では大きく新聞見出しに出ていた、『足切り』という言葉が、あるときから使われなくなり、『二段階選抜』になりました。意味の分からない程『〇〇ハラ』と言うものが増えていることも一因かもしれません。どちらが卵でどちらが鶏かわかりませんが。私は、言論の自由があるのは知ってましたが、政治的言論の自由 の重要さは、何回か小早川先生のブログ拝読して初めて解りました。
  • N.Yamamoto
  • 2019/05/30 2:34 PM
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