アドルフ

「アドルフに告ぐ」は言わずと知れた手塚治虫の代表作の一つであり(手塚治虫には代表作が本当に多いが)、1983年1月〜1985年5月にかけて連載された。手塚は1989年2月に死去したので、晩年の作品ということになる。戦後37年〜39年に書かれたこの作品、それから今までちょうど同じ期間が経過しているのだから驚きである。ヒトラーが実は…というネタはともかく、戦時中の日本その他の社会の状況・雰囲気がとても現実感を持って描かれており、そこの価値は非常に高い。これは「はだしのゲン」にも共通することである。政治的言論の自由が禁圧される社会がいかに恐ろしく、いかに重大な悲劇をもたらすかがよくわかる。満洲の状況とか、いくら五族協和・王道楽土を掲げても、実際にはそうはならないのだ。他にも大東亜共栄とか八紘一宇とか立派な標語はいくつもあるが、実際にはそうはならないのだ。これは人類普遍の原理とも言うべきことであり、広い意味では共産主義とかにも当てはまる。理論的には上手くいくはずであっても、実際にはそうはならないのだ。実際にどうなったかという結果で評価されるのが政治である。戦時中の日本では特高によるアカ狩りで拷問も行われていた。もちろん特高の担当者は正義の実行という意識だったのである。温故知新。例えば今の香港がこれからどうなるか、それは人類普遍の原理により明らかなのである。なお「アドルフに告ぐ」の書名は作中作者が世界の多くの新たに生まれるアドルフ名の人に読んでもらいたいという趣旨と設定されているが、戦後アドルフ名は多くの国で忌避されてアドルフ名の人が少ないのは皮肉である。


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